「Wacky Pirates!!」
著者:創作集団NoNames



  第六章

     −1−

 軍隊の中は、いくつかの部隊に分隊されていた。
その内の一つ。メトルル司令官率いる部隊は矢向に軍事基地を構え、最強の力を持っていた。しかしそれは、部隊というよりもメトルルの巧妙な策略による悪事が激化し、ただの『組織』と化していたのだ。
 軍隊の中の悪の中枢にあたるその集団の素性を知るものはこう呼んでいた。『政府認可組織リフィアス』と。
 その部隊は指導者であるメトルルが、抵抗組織『影』に倒された事により崩壊。それをきっかけに全国各地の『影』の後援者、迫害を受けてきた日本人や、ヘクトの様な『もどき』の生き残り、その全てがひとつとなり立ち上がった。
 各地で暴動が起こり、政府や軍に反発する運動が多発した。それらの目的はいずれも大幅な法の改定だ。
 これにより、政府はやむを得ず法を改定。これまで差別を受けてきた人種や魔術師達も皆平等に扱われる様、綿密な法が組まれた。
 この活動は、歴史的に『人種血統総合保護革命』と呼ばれ、これにより改定された法律は『新国際血統保護法』として新たに制定されたのだ。
 その時の闘いで、抵抗組織『影』に倒されたメトルル司令官は何とか一命を取り留めたが、これまでの悪事を全て洗われる結果となり、死刑処分が決定した。
 かくして、近年著しくなっていた純粋血統の日本人の人口の減少はストップし、同時に不可能とされていた『魔力持ち』との共存も実現された。
 ヘクト、トメ、アルム、ドリアーノは闘いの後、横浜センター街付近の森の中に死んだ仲間達の墓を立てた。
 大きな石が二つ、ケントと、デルタの名前が彫られた。
 そして、地下から見つかった海賊船方時代移動装置については―

「ちょっと待ってよ!どういう事よ」
 トメは激怒していた。
「トメ、落ち着いて」
 ヘクトとアルムがトメを抑える。
「さっきから何度も言ってるだろう。この海賊船は世界初の時代移動装置なんだ。研究のために政府で引き取ることに決定した」
 研究服を着た男が無表情で話す。
 彼は国が指定している研究員である。
その背後では、何台ものクレーン車が次々とやってきて時代移動装置を運ぶための作業が行われている。
どうやら、いずれにしてもトメの意思を確認する気はない様だ。
「あの船はたった一つのひいおじいちゃんの形見なのよ。当然所有権は血族にあたる私にあるはずでしょ?」
「政府で決まったことだ。おとなしくしないと強制的に取り抑えるぞ」
その後、トメは猛反発したが聞き入れられず、海賊船型時代移動装置は政府により回収され研究の材料に使われる事になった。
メトルルがいなくなった今、それが政府によって悪用される恐れはなくなったにしても、トメは曽祖父の遺産を国に奪われた事にどうしても納得がいかなかった。


そして、抵抗組織『影』はその目的を達成し終え解散した。
全ての人種が平等に扱われるよう、世の中が生まれ変わりヘクト達も一般人としての生活をすることが出来る。
ヘクト、トメ、アルム、ドリアーノはそれぞれの道を歩んでいった。




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