「ニセ・アホ女 "ひまつぶし"」
著者:蓮夜崎凪音(にゃぎー)



「もう我慢できない………この際だ、別れてやるっ!」
「いいよ」
「えっ!?」
「………どうした?」
「いいよって……しかも躊躇いなく即答なの?」
「やっぱり嘘か………いやなら言うなよ」
「だってだって、かまってくれないんだもん。ヒマなんだもーん」
「で、衝撃的な台詞で話題をつろうとしたわけか」
「まさか動じないどころか、躊躇いなく同意されるとは思わなかったけど!」
「この状況で何の前フリもなけりゃ、さすがに嘘だって分かるだろ……」
「ちぃ、侮ってたか」
「お前、俺を何様だと思ってるんだ」
「えーと………」
「………」
「……ここはボケるところだよね?」
「聞き返すな、空しくなるだろ」



「しっかし、即答かー。キミの彼女としてのプライドがちょっと傷ついたよー?」
「プライドなんてもんがあったのか、お前に」
「なんてことをおっしゃるの、ご無体な」
「でもまぁ、手の内が分かってなかったら俺もさすがに少しは慌てただろうな」
「どーだか。はくじょーもん」
「まったく………自分で種をまいといて、何で刈り取りを俺にやらせるんだ」
「これが、ぎぶあんどていく!」
「意味が違う」
「そんな冷めたツッコミいらないもん」
「じゃあ、無言を返す」
「遊んでよー!」
「やかましい!」
「ぶー…………」
「一体誰のせいでレポート溜め込む羽目になったと思ってるんだ、お前は」
「飲みすぎたのーはー、あなたのせーいーよー」
「しまいにゃぶつぞ」
「へい!すいません、おやかっ……ったぁー………」
「これに懲りたら以後、挑発的な発言は控えるように」
「ひどいっ、私に死ねというの!?」
「………黙ってて死ぬのと、殴られ続けて死ぬの、どっちか選べ」
「確か、こういうのは家庭内暴力っていうんだよ。いけないんだー」
「ここは俺の家だ」


「でもさ」
「ん?」
「ぶっちゃけ………私のこと、好きだよね?」
「キライだったらどうする?」
「なんでそういうイジワル言うかなぁ……哀しいとウサギは死んじゃうんだぞ」
「お前はウサギじゃないから平気だ。それにあれは寂しいと死ぬんじゃなかったか」
「か、か弱い女の子も寂しいと死んじゃうんだぞー」
「じゃあますます絶対平気だろ…………はぁ、全然できん」
「煮詰まっておりますかー」
「お前のせいでな」
「ひどいよ、レポートの不出来を人のせいにするなんて」
「じゃあ、お前は横からガンガン話されてもレポートが書けるんだな?」
「そういう時はレポート辞めて遊んじゃうもん」
「昨日、お前に付き合った俺が馬鹿だった………」
「えへへー」
「褒めてない、褒めてない」



「はぁ、終わったー」
「やったー、これで遊べるー」
「………ちょっと待て」
「あい?」
「これ以上付き合わせる気か、お前………」
「だって、すごく暇だったんだよ?」
「人の学業の邪魔しといて暇とは言うようになったな、貴様」
「トランプでいいよね?」
「聞けよ人の話」
「え?なんか言……ったーいっいたいいたいってごめんなさいって!」
「あからさまに聞いてないフリすんじゃありません」
「バレたか………じゃあ、何したい?」
「眠りたい」
「却下」
「却下返し」
「ちょっと、パクリはよくないよ」
「リスペクトだ」
「ああんもう、寝ちゃダメー」
「もっと揺らしてくれ、いい眠りに誘われそうだ」
「寝たら死んじゃうぞー!」
「………」
「君の大事なパソコンが」
「………」
「………」
「一番最初は七並べがいいな」
「お、通だね。お宅」




「あ」
「どうした?」
「そういえばさっきの質問、答え聞いてないよ」
「………なんだっけ?」
「私のこと、好き?」
「…………あのな」
「うん?」
「………なんでそういう質問を恥ずかしげもなくするかね、お前は」




[終]