「BAD APPLES」
著者:ポリープ袴田



 神ヤハウェが世界の東に創造した地上の楽園、エデンの園。そこに神は土くれで製造した人間イブ、そしてその肋骨から製造した女、エバを住まわした。
 ヤハウェは言った
「園にある木の実はどれでも食べたいだけ食べてよい。ただし、善悪を知る木の実は決して食べてはならぬ。それを食べたが最後、死んでしまうのだ」
 2人はその言いつけを守り、楽しく暮らした。
 ある日、ヤハウェが造った野獣の中で、最も悪賢い蛇が、エバのもとへやってきた。
「ご機嫌麗しゅう、エバはん。ちょっとお尋ねしたいんですが、いいですか? はい?そうですか、では聞きますよ、あのヤハウェの神はんは、まさか、園の木の実はどれも食べちゃアカン、などと言わんかったでしょうね?」
「ええ、園の木の実はどれでも食べていいのよ。でも、、園の中央にある木の実、それだけは絶対食べても触っても死んじゃうからいけないって、、、」
 蛇は言った。
「死ぬなんてとんでもあらへんあらへん!でまかせや。それをあんさんがたが食いなさると知恵を得て、善悪を知って神はんのようになんのを、ヤハウェの神さんはたんと知ってるからそないなこと言いなはったんや。是非、食うてみぃ、食うてみぃ」
 蛇と別れた後、エバは知らず知らずのうちに、園の中央へと足を運んでいた。そこにある木の実に眼を向けていると、夫であるイブがやってきた。
「どうしたの?こんなところで」
 エバは蛇の話をした。二人はこの木の実を無性に食べたくなった。確かにこの実を食べれば賢くなるように思えた。そして、エバはとうとう実を取って食べた。夫のイブもまたエバに実を貰い、食べた。しかし、2人が食べたのはよく熟れた赤い実とは程遠い、まだ黄色い実であった。その渋く、酸っぱいだけの果実はまだ2人に知恵も善悪も十分に与えることはできなかった。その代わり、エバとイブには得たものがあった。それは「恥ずかしさ」である。2人は互いが裸であるのを知ると、急に恥ずかしくなり、イブは西へ、エバは東へ向け一目散に逃げ出してしまった。その後、この初の人類は再び巡り合うことは無かった。今日は七日目、安息日。神は二人に気づかず粘土遊び。これ即ち神の気まぐれという。




[終]