「晴れに足らず、腹に足らず」
著者:ポリープ袴田



 先の大雨、長雨、でかいの三つ、今日は晴れ。
 『朝暮秋気相催候、此頃、日々益々御壮栄遊ばされ候由、陳者…』云々。
手紙も進まぬこの気候、先の暑さがまだ居すわりながらも夜の冷え込み。
過ごし易いと人は言うかもしれないが、自身にとっては中途半端で嫌な時候。雨も降らず、ただ、すぅっと太陽が日中隠れる気配も見せずだんまりを決め込んでいる。地面も乾き、砂ぼこり。不快とは言わないが、ただ、「怠」の一字が頭を支配する。そしてこの有様、筆も進まぬ乾墨の日々。

 かつて氷水だったものを一口とりつつ散歩に行くなり曲がり角、パチンコ天国、ラーメン千石、ひとはどこなり交番、学校、交差点。さて、せっかく足を伸ばしたついでだ、友人の三河君がそろそろ誕生日であったはず。以前のお礼だ、それ相応のものを買って帰ろう。

 レジの行列、人間、隔靴掻痒の極み。暮れに一括払う時代ではもうないが、買い手と売り手、立場は明確。「大変お待たせいたしました」では相済まぬもの。家畜のごとく並ばせて「飢えぇ飢えぇ」山羊のごとく鳴いてる客を慈悲と優越の感でレジに立つ酪農家。まことに不快なり。飢えぇ。

 そんなこんなで夜が早歩きでやって来て、氷水など飲む余裕などもう無く、布団に入り、唯考える。生と死は等しいかと考える。脳は宇宙へと消え行き、ただ眠る。秋が終わるまでには手紙を書こう。




[終]