「その答え」
著者:白木川浩樹(とぅもろー)





迷っていた。
すぐ目の前にある、この道は本当に正しいのかという自問。

以前にも間違ったことがあった。
それはほんの数日前のこと。
あまり思い出したくはないが、今の状況はその時と同じものと思う。
今回も同じことをしているのではないか。
正しいと思える自信はなく、間違いと言い切る確証もない。
いくつもの交差、曲がりくねったカーブ、いくつかの行き止まり。
確かに見覚えはある。
しかし、どこか引っかかるものもある。
そっと周囲に視線を向けて見たけれど、ヒントになりそうなものは見つからない。
つまりは、自分の力だけで解決しないといけない。

もう時間はほとんどなかった。
否応なしに決断を迫られる。
わずかな記憶をひたすら探り、正解を求める作業を続けるが事態は好転しない。
焦りがどんどん大きくなり、自分が何を考えているのか分からなくなってくる。
背後に無数の視線を感じる。
彼らは何も言わないが、その無言が逆に圧力となる。
いつまでもこうして立ち止まることは許されない。
覚悟を決める。


迷いを捨て、振り向きながら言った。
「できました」
ずっとその様子を見守っていた恩師は表情を変えることなく、少年に答えた。
「その字は『道』じゃなくて『通』だよ」



[終]