「夏のはじまり」



 全てのマス目を 適当に埋めて

 少しそわそわした空気の中で

 頬杖を付いた 午前十一時半


 中間テストは 最終日

 じりじりと照りつける
 教室の窓際は 薄いカーテン越しに
 陽射しが照り付け
 廊下側は 風もなく 蒸し暑いだけ


 鉛が紙をこすり付ける音の合間に

 どこかの民家から

 聞こえてくる 風の鈴


 ふと見下ろした答案に
 間違いを見つけたところで

 終了のチャイムが鳴る


 後悔よりも先立つ 期待感

 解放された教室の誰もが

 長い戦いの終わりに息をつく



 おわりははじまり


 さあ 僕らは

 心置きなく 夏をはじめよう