「未練蔓」






 静かな雨音に

  耳をそばだてて

 時折 誰もいない廊下の

  軋む音を聞く


 汗ばんだ肌の気だるさが

 ころ ころり

 硝子に氷水の揺れる夢を見る


 回り始めた扇風機の

 穏やかな風音色


 密やかにしっとりと 湿気を帯びては

 立ち上る 河川敷の草いきれ


 往く者 来る者

 駆け抜けて 還らぬ全て



 私の踏み出した足はもしかしたら と

 ふと 一度だけ

 足を止める

 季節の変わり目