「道化師の祈り」





 今日もサーカスの控え室で

 ピエロはうずくまる

 化粧が落ちるから 血も涙も流せずに

 正体がバレるから 言葉を知らない


 ただ笑顔でいろと 団長はムチを手に言う

 猛獣たちと同じように 火の輪を飛んで

 バランスをとる玉の上だけで 心を休める


 アザだらけの醜い身体を 賑やかな衣装に包んで

 さあ 軽やかに しなやかに


 誰も ピエロの願いを知らずに

  拍手を送る

 誰も ピエロの言葉を聴けずに

  拍手を送る

 それが礼賛であり 彼の受け取るただ一つの祈り



 万雷の拍手を耳に

 今日も サーカスの控え室で

 ピエロはうずくまる


 それが礼賛であり 彼に課せられたただ一つの祈り