001 "ほおづえついて"


 賑やかな季節が終わった


 窓ガラスにしみこんだ 太陽の匂い

 机に刻まれた 他愛無い落書き

 壁には点描のような 画鋲の跡

 消し忘れた黒板に 最後の日直当番

 柔らかい春の風が吹き抜けてゆく

 彼等の居ない教室


 誰もが去っていった 静けさを 今

 そしてまた 充ちる 賑やかさを 今

 思い描きながら



 教壇に ほおづえついて

 この部屋に積もる 言葉に尽くせない思い出を



 穏やか過ぎる 春の終わり