240 "徹夜"



 昨日の疲れと  ぼんやりとした頭を

 崩れ落ちた建物に残った 暗がりで隠して

 どちらが影なのか 分からなくなった体を

 ずるずる ずるずる と

 いつまでも ひきずりながら



 明け方の うすく ひきのばしたような空を仰いで

 残された夜の終わりを なぞる



 終わりは 次の始まりを呼ぶから

 どんなに 足が痛くても

 どこかが痛くても

 仲間が倒れても

 望んだ結末と 違っても

 人間は 人生と言う名の歩みを止められない



 なくなった 右肘の先を

 包帯で きつく覆いながら

 悪いことをしても手錠はもう かからないと

 笑い話を作る



 眠れる夜は どこにあるのだろう

 私は今日も

 幾億の 銃弾の雨を

 敵味方 幾千の 悲鳴を

 たった 一本の 千切れた腕を

 夢に見ながら


 どちらが夢であってほしいのか 分からずに

 二つの現実に 目を凝らす