266 "引越しの日"


 がらんどうになった私の中に

 差し込む日の光

 いつもと同じなのに 寂しげに揺れる春


 外にある近くの公園から 賑やかな子供の声と

 それを見守りもしない 母親達の談笑が

 さやさやと流れてくる


 別に私は何にも悪いことをしていない

 ドアにかかったタオルの結び目を解くことも

 そこに首をかける男に 声をかけることも

 できはしないのだ


 苦悶に白目をむいて

 やがて舌を出してあの男が泡を吹くまで

 見守るだけ


 今日は引越しの日

 私の中をまた新しく がらんどうにする日