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耳がズキズキと痛い。そして飛行機に乗っているような感覚だ。
けれども、飛行機に乗って耳が詰まるのとも違う痛みだ。
風がなびいているのが分かる。
何か暖かいものが口の辺りにあるのがあるようだ。カレーの味がほんのりとする。
そして、何かが覆いかぶさっている。ほのかに暖かい。
地面はプニプニしている。
意を決して、恐る恐る目を開けてみる。
「?」
黒くて硬そうなプラスチックのような物体が見える。
右手で顔の上のものをどかそうと、手で押しのける。
手触りでそれが顔だと分かった。
ゆっくりと左側に寝かせる。黒い物体はゴーグルだ。
上に乗っかっていたのはミルのようだ。
ぼんやりとして、はっきりとは分からない。痛みはなかったが、脳ミソの中がグルグルかき混ぜられたように、混乱していた。
ゆっくり体を起こすとと、ようやく状況が分かってきた。爆発のときの状況も思い出してきた。
ミルにゴーグルを付けて、オレはミルと顔を向き合わせて、ミルに付けたゴーグルの外側から自分の目を守ったようだ。
とっさの事ではっきりとは覚えていないが多分そうであろう。
その時、顔を密着したから口と口とが触れてしまった。
怪我をしているのにここまでの反応が出来る自分にちょっと驚いている。
やはり上に乗っかっていたのはミルであった。ゴーグルで目が開いているかどうか分からない。
改はミルのゴーグルを外してみる。
瞼は閉じている。改は頬を軽く叩いて呼びかける。
「平気か」
改の呼びかけに反応してミルの目が軽く開いた。
「よかった」
思わずホッとため息をした。
幸い、呼吸はしっかりしているようだ。
安心して改はちょっと笑顔になった。
怪我をしているとは思えない改の活躍でピンチを無事脱した。
「!!!!!」
あまーい余韻に浸っている暇もなく、もっと重大な事に気付いた。
本来ならばこっちの方を先に気がつかなければいけなかったのだろう。
なんと、宙に浮いている!
もうちょっと正確に言うなら、宙を移動しているのだ。
透明な羽の付いていないヘリコプターに乗っているのかのように、軽やかに移動している。
そして、この光、というよりは物体と呼んだほうが正しいそうだ。
クランベリ−プリンセスが光り、うす緑色の光に包まれている。これが噂の力なのであろうか。
弾力もあり、丈夫である。けれども、風をちゃんと感じる不思議な光である。
その不思議なヘリコプターはだんだんと海を離れ、山奥の『箱根』のほうへと進んでいる。
海のほうへ爆風で飛ばされていたらどうなっていたかを考えるとゾッとする。
あの距離でピカを使っても平気なのも、とても信じられない奇跡である。
それに怪我をしていたはずの左腕の痛みが引いている。
「ううーん」
聞き覚えのある声が後ろから聞こえる。
声のする右後ろの方を見ると、香澄もいっしょだ。
どうやら、爆発の勢いで気を失っていたようだ。
「香澄、へいきか」
改は腰を下ろしたまま、声のするほうへ振り向く。
香澄は寝転んだ状態のまま両手でゴーグルを外した。
無事かどうか確認しようと立ち上がろうとすると、うす緑の物体は急にスピードが落ち、森の中へと墜落していく。
「うわぁ―――!!」
三人ははっきりと目が覚めた。
飛行機の墜落もこんな風に急降下するのかと想像しながら、一直線に木が生い茂る森へと突っ込んだ。
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