序 章
そこには玉座があった。
その前では二人の男性が向かい合っている。
「はぁっ!」
掛け声とともに黒髪の青年は銀色に輝く剣を振り下ろした。
「くっ、やるな。…だが!」
男はその一撃を自らの剣で受け止め、力任せに押し返した。
「くっ」
完全に力負けし、青年は倒れこんだ。
男は自身の髪と同じ、真っ赤な刀身の先を倒れている青年に向ける。
「やはりここまで俺を楽しませてくれるのは、アースの人間だけだな。どうだ?俺の仲間になるなら命は…」
「断る」
男が言い終わる前に、青年は拒絶の言葉を言い放った。そして、ふらつきながらも何とか立ち上がる。
「俺はオッドアイなんだ」
どこか楽しそうに笑って、青年は言った。
「そうか。なら、仕方ない」
どこか悲しそうに目を細め、男は言った。
二人は一度距離をとり、互いに隙をうかがっていた。
「終わりにしようか」
「終わり?……ふっ、お前がそれを言うとはな」
「いくぞ!」
男が一気に前に飛び、間合いを詰めてきた。そして、そのまま両手で持っている剣を振り下ろした。
青年はとっさに右にかわしたが、男は今度はそのまま切り上げてきた。青年も負けじと男に剣を突き出す。
そして、二つの剣が交差した瞬間、
「くっくっく。バカなヤツだな、お前は」
銀の刀身が男の胸を貫いていた。
剣を引き抜き、前のめりに倒れる男を見ながら言った。
「俺の勝ち、だな」
青年の右手には血に染まった剣が、そして左手は…。
「篭手がなかったら勢いを殺すことすら出来なかったな」
肘から先のない自分の腕を見つめ、一人呟いた。
腕の止血をした後、玉座と男を一瞥し、青年はその場を後にした。
そして――
[第一章・第一節]