「Wacky Pirates!!」
著者:創作集団NoNames



     −4−

自分は本当に『もどき』なのだろうか。そう疑いたくなるほど、自分の能力は衰えてはいなかった。地下にいながらにして、地上のことがよくわかった。今なら誰かがお金を落としたらその金額まで分かる気さえした。
都心部へ出てきたというのに悪臭はもうひどくはなくなっていた。鼻がバカになったのかもしれない。骨董屋の真下に来ると聞き覚えのある声がした。トメとアルムに間違えなかった。なぜこの場所が分かったのかなぞがまた増えたが、そんなのことは気にせず、地上へいく入り口を見つけるのに少し心が躍った。
人通りが少なくなったころを見計らってマンホールから地上へと這い上がった。辺りは暗く深夜の静けさが不気味な雰囲気をかもし出している。
少し茶色に変色してしまった作業着からなんともいえない臭いが発せられる。入り口からそっと中に入ってみる。
軍の調査が入っていたら・・そんな一抹の不安が過ぎった。そうしたらたぶんここで『ジ・エンド』だろう。可能性がないわけではなかった。
「おせぇじゃないか」
脅かすように誰かが言った。始め、その声の主が敵だと思えた。それほど心の中では辺りの雰囲気に飲まれビクビクしていたのだろう。
「くさいわね、着替えなさいよ」
この言葉で、冷や汗がサッとひいた。このえばった様な言い方トメに間違えなかった。後ろを振り向くと、やはり、同じ位の背をした女の子と、月光に照らされて光る赤い髪がそこにいた。
「無事だったみたいね」
「ああ、で他の3人は・・」
「・・分からないわ」
トメが首を横に振ってボソッと言った。
「店の亭主は殺されていたわ。たぶん、昨日の匂いを追って軍はここを見つけたのね。たぶん秘密をばらさなかったんでしょう。」
ひっそりとトメは言った
「それより、なんか着替えてよ、この臭いじゃあ私達が死にそうだわ。」
トメはヘクトの服を指差していった。
「ああ、悪い悪い。なんか臭いになれちまったみたいで・・」
ヘクトは亭主が住んでいたと思われる部屋に行って、ありあわせのものを身につけた。ファッション的にはやばかったが贅沢は言ってられなかった。
「それで、媒体は見つかったかい」
「その媒体とやらを探したんだが・・・たぶん軍に持っていかれたみたいだな」
「そっか・・」
ヘクトは肩を落とす。
「けど、移動式の媒体なら発見したぞ。コレなら持ち運べて便利だぞ。」
と言って、ノートパソコンをもってきた。
「それと、コレ」
「なんだこれ」
一枚のCDのような発光物を奥の方から取り出した。
「よく分からないが『解凍ソフト』と言うものらしい。『一度暗号にしたものをコレを使って解きほどく』と文献には書いてある。」
「ふーん。よく分かんねーけどやってみるか。」
いつものノリでそのソフトを使って開いてみる。パソコンからでる明かりが3人の顔を青く照らす。
(パスは?)
「なんだこれ。」
3人の声がハモる。5文字の言葉を入れなきゃいけないようである。
『トメノスケ』適当に入れてみた。
(パスは?)
「だめか。なんかパスワードになりそうな言葉はあるか」
「ヘキサゴンっていれてみて」
トメが咄嗟に言った。
「ヘキサゴン。なんだそれ。」
ヘクトが語尾を上げて訊ねる。
「私もよく分からないんだけど、昔からの言い伝えよ。」
『ヘキサゴン』とヘクトは打ち込んでみた。
(ファイナルアンサー?)
「えっ、いいのかな。」
「ファイナルアンサーって入れてみて」
トメが強く言った。この恐怖を恐れない度胸はただただ感心するばかりだ。
『ファイナルアンサー』
すると、画面がなにやら筆で書いたような古い文字が出てきた。
「やったぁ」
思わず3人は叫んだ。急いでプリントアウトをした。たった10枚の文であったが、これがひいおじいさんの残したとてつもない遺産であった。
「えーっと、それで・・んん・・・」
PC上の文字が崩れていく、21世紀の者であればウイルスだと分かるのだが、24世紀の者たちにそんなことが分かるはずもなかった。そして、たった今印刷された少し暖かい紙だけが残った。




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