「Wacky Pirates!!」
著者:創作集団NoNames



    ―2―

「で、この車の目的地はどこなんだ?」
ヘクトが前で運転しているケントに聞いてみた。
「横浜センター街。21区画にぎりぎりかかってる辺りで現在商業都市として栄えている所ですよ」
 ケントはハンドルを握り、前方を見たままで答える。
「それって、センタービルやショッピングセンターがある所じゃない?私も一度買い物に行ってみたかったのよねー」
 トメが口を挟む。 
何のんきなこと言ってんだよ、とヘクトは心の中で言った。
「何よ?何か言いたそうね?」
「い、いやあ。何も。はは………」
 恐るべきトメの勘だった。
 横浜センター街とはケントの言う通り、商業都市として栄えている地区だ。三人の現在地からだと車でそう遠くはない。ショッピングセンターなどの大きな建物も多くあるため、色々な人種の人間も集まる。ちなみにそこは交通の手段がとても豊富であり、最近になって開発された完全無人鉄道の使用も始められている。先日爆破された「らんどまーく」や、「高級住宅街」もその近くに位置する。
「そういえば、私のひいおじいちゃんも前にセンター街付近に住んでいた事があるって聞いたわ。私は行ったことがないけど」
 トメが思い出すと同時に言った。
「おそらくこの地図の指し示す位置はそのひいおじいさんの家だった所でしょう。この地図は大きな建物などではなく、普通の民家を指している」
「なるほど、その家に自分の研究の成果を残してたってわけだな」
 三人の行き先は次第に明確になってきていた。
「ところでもう一つ聞きたいんだけどさ」
 ヘクトが話題を変える。
「アルムは捕まった皆を助けにどこへ向かったんだ?」
 ヘクトは少し前にふと頭をよぎった疑問を問いかけてみることにしたのだ。
「おそらく『矢向』ね」
 トメが簡潔に答えた。
「矢向には軍事基地があるんですよ。小机の隠れ家からだと相当離れているから、何らかの乗り物を利用して行ったんだと思います。基地の周辺の町は近年犯罪者が多発している危険な所との噂もありますが………」
 付け足す様に、ケントが少し丁寧に教えてくれた。
「ふうん、そうか。アルムも無事でいてくれると良いんだけどな………」
 三人が色々と会話を交わしてる間にも、車は順調に横浜センター街へと近づいていた。
 やがて、前方の視界の片隅に巨大なビルの並びが現れ始めた。
「見えました。あれです」
 さっきまで滞在していた「小机」とはえらく差がある様な発展した都会が見え始めた。
 距離的に、まもなく二十分程で到着するだろうと思われる。


 街中の駐車場に車を止めた三人は車を降りて歩きだした。
「そうそう、二人ともこれをつけてね。私達の顔はニュースやなんかでも放送されてるからバレるとやっかいだし」
 そういって、トメが車に積んであった帽子とサングラスを三人分取り出した。
 それを見て、ヘクトとケントは絶句する。
『だから………こういうのはよけい怪しいと思うんだけどなー。第一この人ごみに紛れれば簡単にはバレないと思うけど………』
 ヘクトは心の中でぶつぶつと文句を言ってはいたが、トメの顔色をうかがって口には出さないことにする。
 ヘクトとケントは反論することもなく、トメに渡された物を一式身に着ける。
「地図の場所はここからまっすぐ進んだ後いったん街中を歩いて抜けてすぐです。まっすぐ南に向かいましょう。車ではこれ以上は進めませんので………」
 ケントの説明に二人は首を縦に振った。
 そして、ゆっくりと駐車場を後にして、街に出て行った。




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