「ぬいぐるみ」
著者:白木川浩樹(とぅもろー)



「ねぇねぇ」
「ん?」
「ちょっと休憩しようよ」
「まだ初めてから一時間だぞ」
「こまめに休みを入れたほうが効率が良くなると思うの」
「休みすぎたら効率もなにもあったもんじゃないと思うが」
「う〜」
「唸るな。――――仕方ない、その問題できたら一息入れよう」
「やったー」

「できたか?」
「………まだです」
「解説してやろうか?」
「くやしいから意地でも解く。一人でやるから、できるまで待ってて」
「それじゃ一眠りする時間くらいあるだろうな、解けたら起こしてくれ」
「うわっ、ヒドイお言葉」
「ほらほら。口より手を動かさないと、赤点になるぞ」
「これだから勉強できる人は〜」
「枕借りるぞ」
「うぅ。この人本気で寝る気だよ〜」
「ん? この押入れ開きにくいな」
「あっ。そこダメ!」
「―――だぁぁぁぁ!?」

「え〜っと、大丈夫?」
「………重い」
「だからダメって言ったのに」
「わかったから、とりあえずどかしてくれ」
「は〜い」

「ふぅ。これでよし」
「やれやれ。ひどい目にあった」
「あはは。ビックリだね」
「よくもまあ、これだけ大量のぬいぐるみを押入れに詰め込んだもんだ」
「私も雪崩が起きるとは思わなかったよ」
「そもそも、なんでこんなにあるんだ?」
「ぬいぐるみ集めにハマってるの」
「…………」
「…………」
「ゴミの日っていつだっけ?」
「ダメ〜!」

「まあそれは冗談として」
「ほんと〜に冗談?」
「疑り深いな。俺が悪かったからそう警戒するな」
「う〜」
「片付けるだけだって。いいからこっちに寄こしなさい」
「次やったら怒るよ?」
「わかった、わかった。お前は問題の続きやってなって」

「ふぅ。なんとか片付いた」
「お疲れ様」
「おう。で、そっちは?」
「………もうちょっと」
「………枕になりそうなもの、貸してくれ」




[終]

←BACK:「自販機」NEXT:「菜名」→