「自販機」
著者:白木川浩樹(とぅもろー)



「今日も寒いね〜」
「雪が降ってるからな」
「うん。昨日から降りっぱなしだね」
「この町でここまで降るのは珍しいな」
「傘持って来ればよかったかな?」
「このくらいなら平気だと思う。まあ、さすがに寒いが」
「あ、自動販売機あったよ〜!」
「おい。走ったりしたら……」
「キャ〜!!」
「……はぁ」

「う〜。痛いよう」
「さて、何を飲もうかな」
「無視するな〜!」
「冷たっ。雪を投げるんじゃない」
「一人でのん気に選んでるからだよ!」
「俺は寒いんだ。暖かい飲み物を買おうとして何が悪い」
「このかわいそうな女の子に手を貸してあげようとか思わないの?」
「ある意味ではかわいそうだな」
「それを無視して小銭入れなんか出して〜」
「お、このコーヒー飲んだことないな」
「………」
「ちょっ、おい、冷たいって! 服の中に入れるんじゃない!」

「な〜ににしよっかな〜」
「ったく。何で俺がおごらなきゃならないんだ……」
「ん〜?何か言った?」
「いいからさっさと決めろ。あとその雪玉は捨てとけ」
「は〜い」
「―――はぁ。コーヒーが美味い」
「お待たせ〜。って一人で飲み始めてる〜!」
「待ってても意味ないだろ。それで、お前は何買ったんだ?」
「これ? コーンポタージュ風味のわかめスープ」
「……なんだ、それは」
「こんなの初めて見たよ。どんな味なんだろう?」
「何でそんなもの売っているんだ。そして何でお前は買うんだ」
「好奇心旺盛なお年頃なの」
「……」
「今、心の中でバカにしたでしょ?」
「さあな。ほら、冷める前に飲んだらどうだ」
「あ〜。ごまかした〜」

「結構積もったよね〜」
「まあ、年に一度あるかないかだし。たまにならこういうのもいいな」
「そうだね。寒いけど、すっごく綺麗だし」
「ああ。――――さて、温まったことだし、そろそろ行くか」
「うんっ」

「で、さっき千円渡したんだが。釣りはどうした」
「………あはは〜。――――うわっ!冷たっ、冷たい!」




[終]

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