「名護くん日常閑話 〜レンタルビデオ〜」
著者:白木川浩樹(とぅもろー)





「名護くん日常閑話 〜レンタルビデオ〜」


「ふっ。ふふふふふ」
「狩俣、気持ち悪い」
「いやいやいやいや、あまりにくだらなすぎてな」
「途中でめちゃくちゃビビってたろ」
「ち、違います!」
「何故敬語になった」
「はん! この狩俣様が、たかがホラー映画でビビるとでも思っているのか!」
「なら俺の服を離してくれ。鬱陶しい」
「馬鹿ヤロウ! 何か掴んでないと怖いだろうが!」
「俺はその必死さが怖い」

「大体、なんでホラー苦手なくせに借りてくるんだ?」
「ビデオ2本借りたら一本無料って言われたら、見たくなくても借りちゃうだろう」
「いや、俺なら見たいものを借りるけど」
「お前がみたいのってどうせあれだろ? 101匹にゃんこ大行列みたいなやつ」
「あれは名作だった」
「視聴済み!?」
「DVDとブルーレイも持ってる」
「このファンシーっ子め」
「好きなものを好きといって何が悪い」
「もういい、次はこれ見るぞ!」
「まあタダで見せてもらって文句はないが」
「再生っと」
「今度はカンフーものか」
「日本のマンガが原作のやつだ。俺も全巻持ってる」
「ほとんど白人だけど、そういうものなのか?」
「本当は日本が舞台だけど、ハリウッドなりのアレンジなんじゃね?」

「……」
「……」
「なんだ、これは」
「宇宙戦艦だって、アメリカ大統領が言ってたぞ」
「おかしいだろ! 原作まるっきり無視じゃねぇか!」
「俺は読んでないからわからん」
「ちくしょう、無駄に豪華な演出しやがって……」
「パッケージにも、SFカンフーアドベンチャーって書いてあるぞ」
「タイトルが同じなだけだ……。これは別の作品だ……」
「まあ、本人がそれで納得するならいいけど」

「なかなかいいラストだったな」
「なんかもう、ここまでぶっ飛んでると逆に感心するわ」
「さて、一休みして何か食うか」
「さっきの映画見てたらラーメン食いたくなった」
「そんなシーンもあったな…………カップ麺ならあったぞ」
「俺ミソ味のほうな」
「じゃあ塩は俺か」
「名護、ポット空だぞ」
「沸かしといてくれ。ついでにコーヒーも入れよう」
「オッケー」

「さて、三本目だ」
「今度は何だ?」
「ビデオ屋のランキングで一位だったから借りてみた。内容は知らない」
「そもそも、まだVHSを借りてる人がそんなにいるもんか」
「お年寄りなんかは結構借りるらしいぞ。白黒映画のやつとかそういうの」
「詳しいんだな」
「前に赤嶺が店員やってたとき聞いた」
「ああ、なるほど」
「というわけで、ポチっとな」

「うっ、うぅ……。くぅっ……」
「いい話だけど、泣く映画じゃないと思うが」
「お前は感性さびついてんのか!」
「そこまで言われるほどだろうか」
「だってよぉ、結婚した途端に余命6ヶ月とか宣告されるんだぜ!?」
「結婚した時点で83歳だったけどな」
「バッカ、お前。そういう問題じゃないだろうが」
「言いたいことはわかるけど、なんと言うか、なぁ?」
「ちくしょう、これが真実の愛ってやつか……」
「いや、これ結婚詐欺の話だったし」
「あえてコメディ仕立てにして悲壮感を見えなくする。素晴らしい手法だ!」
「深い……のか?」
「お前は犬や猫ばっかり見てるからわからなくなるんだよ」
「最近はペンギンにはまってる」
「そこじゃねぇ!」

「巻き戻し完了っと」
「さすがに6時間連続は疲れたな」
「でも、たまにはこういう休みの過ごし方も面白いだろ?」
「いきなり『映画見ようぜ』ってやってきたときは驚いたけど」
「名護んちじゃないとビデオデッキがないからな」
「……ん? まだ何か袋に入ってるぞ」
「うおぉぅ!? ちょっと待った!」
「なかなかマニアックだな」
「評価せんでいい!」


「人間、色々あるよな」
「しみじみ語るなぁ!」


[終]



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