「罪の糸」



 欠けた三日月の 寒々とした灯りに

 ぼんやりと 手元だけが見える夜

 夜風の音に 揺れながら一筋

 掌に降りる 宵闇の糸


 いつかの夜 触れた 黒髪のように

 月夜を照り返す 瑠璃の色

 強い風に離れぬよう 怯えながら

 私はこの手を開けずに


 いくら引いても 手繰り寄せても

 手ごたえのない か細い手触りは

 冥府に墜ちた貴女が遺した

 残酷で無垢な 一縷の望み


 雲に隠れた月の 朧げな光に

 零れるのは 溜息ばかりか

 夜風の音に 揺れながら一筋

 掌に降りるは 追憶を背に


 断ち切れぬ 罪の糸