「閉口世界」



 何も言わなければ 傷付くことはないから
 貴方に見せるのは 雪のような沈黙を
 たったひとひら

 我慢ではなくて 意地でもないの
 ただ 「貴方だけ」への言葉が作れなくて
 たったひとこと それすら怖くて
 濁した言葉を てのひらで持て余す

 寄り添えば伝わる温もりの他に
 何かを求めてしまうのは
 都合が良すぎると 知っているけれど

 何か言わなくては 進むことができなくても
 貴方に見せるのは 雪のような沈黙だけ
 今日も 視線は床を見る