「風上からの詩」



 殺して 殺されて

 憎んで 憎まれて

 新聞の片隅よ 君は最初から

 こんな人間の営みを ぽろぽろ溢しながら

 僕らに伝えてきてくれているのかい



 スターは鮮やかなシャッター音を背景に

 舞台から引きずり降ろされ ついに居なくなった

 政治家はまるまると太り 豚のようになった横腹を

 猟師の一矢によって射抜かれる

 被害にあった当人だけが 声を高らかに叫ぶ

 街を 何食わぬ顔して行きすぎる 無関心の群へ


 悪事は芋掘り式に暴かれて 根の深いところを前に 必ず切れる

 輝かしい英雄譚は 根の果てまで掘り返され 人間性により汚される


 人間の集うところに

 己が存在している全ての場所に 清き泉を期待してはいけない

 新しいものは 弊害を必ず産み

 矛盾は さらなる矛盾を生む



 濁りを嫌う人間に 何も出来はしない

 濁りを知らぬ人間に 何も成せはしない

 しかし 己の内に淀む濁りに 溺れてはいけない


 何が真実なんて そんなことはどうでもいいのだ



 僕らは いつから

 情報に もてあそばれる 哀れな駒に成り下がったのか






 僕らは いつまで

 一人きり くるくる回る 寂しい独楽でいればいいのだろう