「病心裡」



 終わりは 誰にも必ず 一度は訪れる

 病んだ身を臥せ やがて朽ち果てる我が身の上にも

 毒を孕み 灰と化した土の上にも

 穢れた影を引きずる 人々の胸にも

 使われなくなり 忘れ去られた物の元へも

 いつか 必ず

 くたびれた終わりは 雪のように静かに


 ただ しんしんと 降りるだろう



 今在るものに はじまりなどない

 みな 終わりしかない

 はじまりだと思っているのは

 終わりに向かう中の区切り

 刻み付けられる 黒い傷跡

 とても深く大きな 黒い闇へ

 傍らに潜む 穏やかな翳りと

 傍らに淀む 密やかな狂気を 路連れに

 病んだ心は疲れ果て 影の底へと眠る



 これは多分 一つの終わり

 二度と帰らぬ 一つの区切り

 病んだ心は裡に返り

 夜が地平に溶ける頃


 置き去りにされた私は

 朝日の前に ひとり

 成す術もなく 立ち尽くすだけ