「夏陰」




 不意の風に 散らばるような

 もろい絆だったから

 こわれないように そっと

 この思いには はるか

 遠く及ばない力で

 手繰り寄せる


 ただ はぐれないように

 すべりおちないようにと

 いつかは 幻のように消える

 あなたの腕を 抱きしめていた



 砕け散った夏の最期を見届けて

 初秋のまだ 眩い日差しの中を

 歩き出す



 暑さの溶けた風を待つ

 あの夏の木蔭は 色を変え

 かわしてくれた言葉は

 心の中で 色あせても