「わがはいは」





 わがはいは    である


 なにものにも なれるかわりに

 なにものかであることを わすれてしまった


 ジョーカーみたいだと人は呼ぶけれど

 切り札であるには あまりに不安定で

 頼りなく



 自ずと忘れてしまったことと

 自ら捨てたものの 区別もできず


 演じるはずの役割さえも

 既に 思い出せない



 新しい名前を つけてくれる人もなく

 優しい声を かけてくれる人もなく

 おぼろげに残る 何か懐かしいものを かき集めても

 楽になった首元の 涼しさが すべて



 わがはいは   である


 なまえは もう ない


 呼んでくれる者が 現れるまで


 誰にもならない