015 "上を向いて"



 涙がこぼれないように

 上を向いて歩けた 幸せな夜は

 いったい いつの時代までなのだろう


 よほど注意して歩いていても

 無免許の車はそこいら中で 制限速度を超えて暴走するし

 あとで「誰でも良かった」なんていう

 通り魔は 夕暮れの街をナイフ片手に闊歩しているらしいと

 テレビはエラそうに そんなことを吐き捨てる


 それでなくても 人々は忙しくて

 夜空の星を数える余裕なんて ないのに


 上を向いて 誰にも見られずに涙を流せた

 そんな幸せな夜は

 いったい いつから無くなってしまったのだろう