063 "フラッシュバック"


 少し前から よく見る

 目の前の光景


 もがき苦しみ のた打ち回り

 泡を吐き 首を掻き毟って

 白目をむきながら 甲高い声を上げる

 目の前の 或る動物の最期を



 何度も 何度も 何度も 見たことが ある

 目の前の光景


 何度目なのか 覚えていない

 これが夢の中なのか 現実なのかさえ分からずに

 何度も 何度も 最期を瞳に焼き付ける


 希望 恐怖 渇望 葛藤 モラル 世間体 レッテル

 暴力 恐怖 暴力 恐怖 暴力 恐怖 暴力 恐怖



 夜を 駆けて

 小石を踏んだ 裸足が裂けて

 血塗れの牡丹が アスファルトに咲く

 ようやく たどりついた闇色の引出の中から

 黒の小瓶を一つ

 もう 迷えない
 もう 躊躇えない
 もう 分からない

 もう どうでもいい

 実体を持つ影でも

 虚実を纏う幻でも


 あなたが 死んでいても

 いなくても


 私はただ あなたを殺す 夢を見るだけ