092 "果て"



 ここでおしまい

 そういわれて ふと足を止める


 そこは 断崖の絶壁でもなく

 塔のてっぺんでもない

 雑居ビルの乱立する 薄暗い通り



 日に透けて 消えてしまいそうな

 夜明けを待つ あきらめの笑顔

 かける優しさをすべて 失いあった後の

 すがすがしいまでの 他人の孤独


 震えた瞳に 目を伏せて

 ただ一度だけ うなずいて

 まだ 薄暗い通りに

 零れ落ちる涙は見えないまま


 一つの果てから 物語の終わりを見送る 朝焼けの街角