324 "夕闇の向こうから"


 夕闇の向こうから

 ふわふわ ふらふら

 やって来る 影

 オレンジ色の帰り道から

 今日も誰かを連れてゆく



 逆光の 高いコントラスト

 目を凝らしても

 影の本質は 陰の中

 うめき声も 足音も なく

 ひたひた ひたひた

 アスファルトを滑りながら



 疲れた体を ベンチに横たえて

 うつむいた視線の先

 差し出された 黒い手を見て

 自分は要らないのだと

 ようやく気づく



 手を引かれて

 夕闇の向こう側へ

 ノルマを終えた影は 音もなく


 私の居ない 夜が始まる