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「遠山宗一郎………?」
睦葉の表情が少し曇った様に見えたのは啓の思い過ごしではなかったのかも知れない。 睦葉は明らかに何かを考え込んでいた。
「知っているのか?」
「いいえ、知らないわ………」
しらを切っているのか、とも思ったが啓は始めから今日の睦葉はおかしいと思っていた。 まず、昨日の強気な感じが全くない。
そればかりか口調までちがう………。
「まぁいいや。とにかく帰るよ」
そう言って啓が立ち上がろうとした時だった。
睦葉の口から最も意外な言葉が出てきた………。
「え?もう帰っちゃうの?」
「え?」
思わずハッと振り向くと、おびえた目で啓を見つめている睦葉がいた。
「どうしたんだよ?いったい………」
睦葉は重い口を開いた。
「恐いの………。何かすごく嫌な気分………ねえ?今日泊まっていかない?」
啓は一瞬戸惑った。
こんな睦葉を見たのは何年ぶりだろうか?しかし、明日は学校だったのもあり、親にも心配されるし、何より啓は今日は一人きりで考えたかった事があったのだ。
「いや、明日また来るよ」
「………そう。じゃあね」
悲しそうな睦葉を振り返らず、啓は部屋を後にした。
その夜、床についた啓はずっと考え込んでいた。
遠山宗一郎………スケッチブック………三日月…………それに睦葉。
これらを結ぶなんらかの接点があるのだろうか?
そしてそれは、自分が探し求めている物に関わりがあるのだろうか?
「そう言えば変だったな………今日の睦葉………」
その時だった!啓が窓の外の異変に気付いたのは、
「何だ?火事か?………おい!?あの家って………」
そして啓の脳裏によみがえってきた。
あのおびえた様な「あいつ」の顔が………。
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