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「うおおおおおおっ!」
しばらく町並を爆走した後、門が見えてきたところで剣を抜いた。
シェラが持っていた一振りは、西日にさしかかった太陽をうけて、強い光を放つ。
門の前には城の兵士が二人突っ立っていたが、声を上げてようやく気づかれる。
「オッドアイか!」
二人が同時に持っていた槍を構えたところで、俺はなんら足を止めることもなく自分のペースで走り続けた。
「バカめ!」
一人が槍を繰り出すのが、『見えた』。
だが、突き出される前に俺の体は彼を擦り抜けて、一歩抜けた所で急停止する。
すれ違うようにして、険しい顔のココノが先に闘技上の中へ消えていくのが見えた。
「はぁッ!」
切り返しで剣を振り払い、間合いに入った彼の胴を紙のように切り裂く。
手応えなど、もはや感じない程に、早く振り抜く。
「あ………う………うわあっっ!」
「貴様ッ!」
二人目が俺を睨んで槍を突き出そうとする。
しかし彼にとっての渾身の突きでも、俺には止まっているように見える。
流れるような連撃を全てかわし、息を吐いたところで一歩間合いから退いた。
一息ついた頃、切り裂かれた方が内蔵を腹から吐き出して、崩れ落ちた。
「どうした、もう終わりか」
そう意識せずに、口から余裕の言葉が漏れる。
自分の体ではないように、右手に握られた剣がしっくりと手になじむ。
震えすらない。
「き、貴様………」
槍の穂先が細やかな金属音を立てて笑う。
対照的に、持ち手の人間の方は顔面蒼白のまま固まっている。
実力差が明らかなのは本人が分かっていることだろう。
ただ、俺はここで止まるわけには行かない。
こんなところで立ち止まるわけにはいかない。
「じゃあな」
それだけを短く残すと、俺は闘技場の暗闇の中へと駆け出した。
しばらく一本道を走ると、分かれ道の辺りでココノが妖精のように自分を光らせながら漂っているのが見えた。
「ココノ」
「この先が多分、拳闘士が入場する入場口だと思います」
「…………いよいよか」
剣を握る手に自然と力が入る。
最後まで利用されていたとは言え、この手で結構斬り倒してきたことを思い出す。
スカイに来てたったの二週間足らずで、アースにはないことをいろいろと経験した。
片目で行動したし、剣を振るって砦を一人で制圧もしたし。
恩賞を受けるかと思えば焼却場で働きもしたし、殺されかけた。
そして、砦の親玉、ホーザーやシェラとも戦った。
長いようで短かったその日々を、終わらせる。
「行こう。ヘンリーを倒して、この馬鹿騒ぎを終わらせよう」
「はいっ!」
「ヘンリーさえ倒せば、シェラをなんとかできるような気がするんだ」
「マスターを、ですか」
「まあ、確証はないんだけど」
適当に頭を掻くと、ようやくココノが笑った。
「確証のないほうが、一彦さんらしくていいですよ」
「無策だとか言いたいのか、お前は」
「あ、いえ、それはぁ…………」
無理して取り繕っているのだろうが、口の端が面白そうに歪んでいる。
「ま、とりあえずいろいろ考えたってしょうがないんだ。歴戦の勇士と違って、こっちはただバカ力のスカイ初心者なんだからな」
俺は剣の鞘に手をかけると、ゆっくりと遠くに見える光のほうへ歩き出した。
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