「Wacky Pirates!!」
著者:創作集団NoNames



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 その雰囲気を何と表現したら良いのだろうか。
 虹色の様な色で、ゆらゆらと揺れながら流れを産み出している不思議な空間。
 これが、いわゆる『時の流れ』という物なのだろうか。
 人間が生活する世界から見れば明らかに異世界、異次元空間である。
 そんな不思議な流れに乗って、船は進んでいた。
「これがひいおじいちゃんの航海日誌に書かれていた『時空という名の大海原』・・ね」
 トメは不思議そうに辺りを見渡しながら言う。
「てかこんなことしてて良いのかよ?この船盗んできちゃってさ。これで俺たち本物の犯罪者だぜ?」
 ヘクトは少し不満そうに言う。
「まあまあ、二人とも前にもニュースに顔を出されている立派な凶悪犯なわけだし」
 アルムはふざけたように言って、笑う。
「失礼ね、盗むだなんて。この船はもともと私のひいおじいちゃんの物なのよ!」
 トメはふくれっ面をした。
 そう、彼らの会話から読み取れる様に、政府特設研究所から時代移動装置を盗み出したのはヘクトたちだったのだ。
「ところでこの船はどこに向かってるんです?」
 アルムが尋ねた。
「さあ、適当よ。航海ってそういうもんでしょ?」
 トメが平然と答える。
「おいおい、大丈夫かよ。第一この不思議な空間、ちゃんと出口あるんだろうな?」
「大丈夫よ。航海日誌によると前の航海ではうまくいってたみたいだし」
四方八方どこをみても虹色のうねりがひたすら続く。
ヘクトが不安になるのも不思議ではない。
「この異次元空間を抜けた先にはどこか別の時代の世界が待っているわけですね」
 アルムは何だか楽しそうだ。
「ええ、楽しみね」
 トメもうなずく。
「ったく。もうどうにでもなれよ」
 ヘクト、トメ、アルムがこの計画を立てたのは一年前。
 言い出しは勿論トメである。
 魔術師であるヘクトやアルムにはもちろん身よりはないし、トメもすでに両親を失くしている。
 頼る者のいない三人は、トメの提案から時空海賊、いわゆる『タイムトラベラー』になろうという事を決意した。
 一年間はそれぞれの身辺の整理の為に使い、今日ついにその計画は実行された。
 三人はトメの曽祖父の残した航海日誌だけを頼りに、果てしない時空へ航海の旅に乗り出したのだ。
 海賊船型時代移動装置は三人を乗せて、虹色に輝く異次元空間をゆらゆらとただよっている。
やがて
「見て、光が見えた!」
 トメの顔に光があたった。
 船の前方には虹色の空間に突然大きな穴が発生し、船を飲み込もうとしていた。
「あれが異次元空間の出口!航海日誌の通りです」
 アルムも次第に興奮し始めた。
「この先に見たこともない様な世界があるのか・・」
 ヘクトの目も輝きに満ちていた。
 そして、ヘクト、トメ、アルムは自分たちがまだ見たこともない様な時代へと旅立って行った。

その船にはマストも碇もない。風向き、天候も問題ではない。虹色に輝く不思議な海。
 時空という名の大海原を、時の流れに乗って、ただゆらゆらと進んでいく。その先にどんな景色が、どんな時代が待ち受けているかは誰も知らない。奇妙な航海だ。この奇妙な航海に乗り出した奇妙な海賊たちを、ある科学者はこう呼んだ。
 Wacky Pirates!!



−完−



[第六章・第二節]