「オッドアイ」
著者:創作集団NoNames



   −2−

「な、長かった〜」
 今日のはマジできつかった。50分もぶっ続けで喋り続けるとは、恐るべし校長。
 先生の中にも何人かグッタリしてる人がいる。教師も大変だな。生徒は3年だけだけど、教師は何年も聞き続けるんだから。
「ん〜なんだ、終わったのか」
 となりで裕也が大きくあくびをした。
「よく眠れたか?」
「もうばっちり!カズも寝りゃいいのに」
 冗談じゃない、立ったまま寝るなんて芸当できるか。
「俺は歩きながらでも寝れるからね」
 俺の表情を見て言いたいことを悟ったようだ。
 しかし、コイツいつか死ぬんじゃないか?
「こないだなんか、自転車乗りながら寝ちまったよ」
 ……コイツいつ死ぬんだろう。
「まぁ、いいや。さっさと教室もどろう」
「そうだな」
 そして、教室にて。
 ここでも三宅による長ったらしい話。さすがにここでは俺も寝た。まだ35の癖におっさんみたいだぞ、三宅。
「じゃあ、話はこのくらいにして、お待ちかねの成績表だ」
 その一言でクラスがざわめき始める。高校になってもこんなところは変わんないんだな。
「え〜と、東、池田…」
 順番に成績表が渡されていく。みんなの表情が結構面白い。
「小山、おい小山」
 あ、俺の番か。
 成績表を受け取り、自分の席に戻る。
 高校初の成績はどんなもんかな。テストも結構よかったし、問題はないと思うけど。とか思いつつゆっくりと開く。
「どーだった?カズ」
 うわ、いつの間に後ろに。ってもともと後ろの席か。
「脅かすなよ、お前はどうだったんだ」
「俺?俺はオール5『ズパン』」
 一瞬でカバンからハリセンを取り出し殴る。まさに神技。
「俺のほうがテストよかったんだ。それなのにお前に負けるはずないだろう」
 ちなみに平均4.2。我ながらなかなかの成績だ。
「いてて、ちょっとしたジョークなのに。本当はオール3だった」
 頭を押さえつつ、今度はちゃんと質問に答えた。初めから言えばいいのに。
「これで、今学期はもう終わりだ。夏休みだからってはしゃぎすぎるなよ。特に沢村と小山」
 名指しかよ。それにいつも問題起こすのは裕也で俺は被害者なのに。
「それじゃあ、みんな2学期に会おう」
 三宅がそういった瞬間にみんな一斉に立ち上がった。俺も帰るか。
「裕也、帰ろうぜ」
「ああ、そうだな」
 二人とも帰宅部なので、残っていてもすることはない。勉強なんかする気起きないし。
外に出ると再び直射日光が襲い掛かってきた。正午に近い分、今のほうが厳しい。
「あちぃぃぃ、何だ今日は。まるで夏じゃないか」
「7月は十分夏だよ」
ハリセンを出して突っ込むだけの気力がもうない。一日で一番やる気の出ない時間帯だし。
「そうだカズ。今から家に行ってもいいか?」
 裕也が突然そんな話をしてきた。
「なんだ、いきなり」
「昨日コンポが壊れちゃってさ、MDの録音ができんのだ」
 つまり、ウチのを使わせろ、と。
「別にいいけど、今から?」
 そう言うと、裕也は軽くカバンを叩いた。
「ちゃんと持ってきてるから、心配無用!」
 裕也クン、別に心配はしてないよ。
「それじゃ、暑いしさっさと帰ろう」
「おう」
 二人で帰り道を歩いていると、後ろから何かが突っ込んできた。
「カズ君はっけ〜ん」
 ぐはぁ。これは…蹴り?
 痛みに耐えつつ飛び蹴り(おそらく)をかましてきたヤツを確かめてみると、そこには実に嬉しそうな顔をした理奈が立っていた。




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