「オッドアイ」
著者:創作集団NoNames



    −3−

「…………」
 『シェラの家の庭園』を見回して、足元に台座があることを確認する。
 目の前に、口を開けて呆然としたままのココノとシェラが突っ立っていた。
「………失敗か?」
「いや、これが、俺の答えだ」
「ついでに俺の答えでもある」
 横に、二人が突っ立っていた。
「な、なんで二人とも残ったままなの!」
 理奈は視界に俺達を捕らえるやいなや、狼狽して後ずさった。
 俺も後ずさりたい気分だった。
「なんでって、俺こそ、二人はてっきり無事に戻ったものだと………」

「なんていうかなぁ………俺はまだこの世界で戦っていきたい。
 魔力を使わなければ、剣だけでも生きていくことができるから………力があるなら、役に立てるならまだ俺はシェラたちと一緒にこの世界を守っていきたいと思うんだ」
 裕也はどことなく照れくさそうに頭を掻いた。

「………私は、まだここにきてスカイラウンダーっていうのに覚醒もしてなければ、人を殺してもいない………もう兄貴やカズ君がたくさん戦ったから………もう殺してほしくないし………よくわからないけど、スカイだって大変なんでしょ?兄貴が前に守ろうとした世界とか、シェラさんと簡単に見捨てていけるほど、私だって薄情じゃないし…………」
 理奈もちょっと戸惑い気味に言葉をつなぐ。

「つったって、一応償還されたにしても、おいしいところは裕也に持っていかれるわ、目だった活躍もしてなかったし、裕也はこの先無理をしてるんだから戦えないだろうし、理奈だってこの世界が嫌いっぽかったから残りはしないだろうと思って……ホムンクルスができるくらいまでは異常事態に対処してもいいかなぁと思ったんだけど………」

 そして。

『だって、いつでも帰れるわけだし』

 三人の声が、見事にハモッた。
「…………アハハハハハ!」
 しばらくの沈黙の後。シェラが狂ったように笑い出した。
 いつもの静謐さからは信じられないくらいの声の張り上げようだった。
 気がつくと、隣でココノも口を押さえて笑っている。

 つられたように、自然と口の端がゆがんで、笑いがこみ上げてくる。
 二人も、同じように笑いをこらえているような顔になる。

 やがて、魔方陣を中心にして俺達の笑い声が庭園の中に満ちていった。




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