「チョコレート」
著者:白木川浩樹(とぅもろー)



「ヒマだね〜」
「ああ、ヒマだな」
「何かないの?」
「何もないな」
「……本ばっか読んでないで、かまってよ〜」
「えらくストレートな要求だな。だが、断る」
「ふう。つまんない男だねぇ」
「文句があるなら今すぐコタツから出て家に帰れ」
「や。寒いもん」
「大体なぜウチに来たんだ。お前は」
「だって私んちのストーブ故障しちゃって寒いの」
「ここにいても結局帰りは寒い中歩くんだろ?」
「あ……」
「…………アホか」

「あ、そうだ!」
「ん? 急用でも思い出したか、よし、帰れ」
「ひどっ。そうやってすぐヤなこと言うと嫌われちゃうよ?」
「勝手に人の家に入ってコタツで暖まってた女に言われたくはないな」
「そ、それは……」
「まあお前にあれこれ言っても無駄だな。それで、どうかしたのか?」
「え? ああ、そうそう。コレだよ〜」
「近所にあるコンビニの袋か」
「来る途中にお菓子買っといたの思い出したの。時間もちょうどいいし、オヤツにしよ」
「オヤツって……お前は小学生か」
「むっ。そんなこと言ってるとあげないぞ」
「いや、小腹も空いたし折角だから戴いておこう。何か飲み物持ってくる」
「コーヒー薄めでお願い。お砂糖は一杯半でミルクちょこっと、温度は熱めでね」
「ここぞとばかりに、この女は……」

「はい。ど〜ぞ」
「ああ。…………ってなんか箱があたたかいぞ?」
「あ〜。うっかり袋をコタツの中に入れちゃってたみたい」
「これポッキーなんだが」
「おおっ!?」
「開けたら中は大変なことになってるんだろうな」
「ええっと、どうする?」
「コレは冷蔵庫に入れて固めてみよう。とりあえず、今は他のお菓子を開けるか」
「そうだね。え〜っと、他には……と」

「一つ尋ねたい」
「………何かな〜」
「お前は本当にアホなのか?」
「真顔でとんでもないこと言わないで。落ち込んじゃうよ?」
「他に買ってきたものが、アーモンド入りチョコとチョコフレーク」
「あはは、……チョコって美味しいよね」
「まともな状態なら食う気になるな」
「………どうしよっか」
「一人で頑張って処理してくれ」
「いや〜!ドロドロしてかたまりになってる〜!」




[終]

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