「シール」
著者:白木川浩樹(とぅもろー)



「じゃじゃ〜ん!」
「…………」
「おや? 反応が薄いねぇ」
「そんな紙キレ見せられてどう返せと?」
「やっと当たったレアなのに〜。それにこれは紙じゃなくてシールだもん」
「あ〜。最近やたらとスナック菓子食ってると思ったら」
「そ。今これを集めるのにハマってるの〜」
「またずいぶんと子供じみたことを」
「え〜。今コレ結構はやってるんだよ」
「小学生の間でだろ?」
「違うよ。私くらいの歳でってことだよ」
「だから、精神年齢が小学生くらいってことだろ」
「……てりゃっ!」
「おおうっ!? いきなり蹴ろうとするな、危ないだろう」
「キミは失礼だよ!」
「事実だから仕方がないだろう………だから蹴るなって」
「うぅ〜!」

「うわっ……」
「ふっふっふっ。すごいっしょ〜」
「これ全部お前が集めたのか?」
「うん。こっちのファイルもそうだよ」
「こっちもって…………いったいいくらかかってるんだ?」
「え〜? どうなんだろう。気にしないから忘れちゃった」
「確かこれが一個百円で、それがこれだけだと……」
「どうしたの? 急に暗い顔して」
「いや。少し悲しい気分になっただけだ」
「よくわからないけど、大変だね」
「ああ、まったくだ」

「というわけでですね」
「どういうわけだよ」
「そこは置いといて。ハイ、これ」
「ハイってお前。なんだこれは」
「ん?だからシール付きのお菓子だよ?」
「それはわかる。俺が言ってるのは何故それを俺に渡すのか、ってことだ」
「だってシールは中に入ってるから」
「……イマイチ言いたいことが判らないんだが?」
「だから、開けたらすぐに食べなきゃ湿気っちゃうでしょ。そうなったらもったいないよ」
「ああ、それで俺に食えと言う訳か」
「私はちょっとダイエット中で〜」
「……まあ、アルバムが一杯になるほど食えばな」
「はうっ。視線が冷たい……」

「甘かった………」
「はい。お茶」
「どうも。――――で、中のシールは…………これか」
「あ〜っ! これ欲しかったやつだ、ありがと〜」
「………どういたしまして」

「で、これだけ集めてどうするんだ?」
「みんなで見せっこしたりするよ」
「学校でか?」
「ううん。そこの公園で。もうすぐみんな来るころかな〜」
「公園って、………小学生しかいないが?」
「あ。もう来てるんだ。それじゃ、ちょっと行ってくる〜」
「行ってくるって…………やっぱり精神年齢小学生だよなぁ………」




[終]

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