「緑茶」
著者:白木川浩樹(とぅもろー)



「あれ?」
「ん?」
「いつものと味が違う気がする」
「へぇ、よく気づいたな。葉を変えたんだ」
「美味しいね〜」
「ああ。思ったより甘みもあるし、香りも強すぎない」
「そうだね〜」
「もう少し蒸らす時間を長くして、お湯の温度を高くしてみてもいいかもしれないな」
「……そうだね〜」
「前のと比べると渋みが薄いから、それくらいでバランスが取れるかな」
「…………」
「変な顔して、どうかしたのか?」
「別に〜」

「お茶請けといったらやっぱりこれだよね〜」
「欠片を落とすなよ」
「このお煎餅おいし〜」
「俺が買ったものだけどな」
「いいのいいの。食べちゃえばみんな一緒だよ」
「いや、意味が分からないんだが」
「食べないんならそれももらうね〜」
「少しは話を聞け」

「おかわり〜」
「自分でやれ」
「え〜」
「お茶くらい自分で淹れられるだろう」
「キミに淹れてもらったほうが美味しいんだもん」
「同じように淹れれば誰がやっても同じ味になる」
「普通の人はお湯の温度とか知らないよ〜」
「ったく。んじゃ代わりに煎餅一枚もらうぞ」
「あっ。やっぱり自分でやる!」
「…………はぁ」

「そういえば」
「なに〜?」
「今までお前に緑茶を淹れてやった覚えがないんだが」
「そういえばそうだね」
「なぜ前のお茶の味を知っていた」
「…………あ」
「さて、理由をじっくり聞かせてもらおうかな」
「答えわかってるくせに〜!」
「なんのことやら」
「あっ!くすぐるのは、わき腹はイヤ〜」




[終]

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