「ルービックキューブ」
著者:白木川浩樹(とぅもろー)



「フリーマーケットに到着〜」
「へぇ……、こんな近場でやってたのか」
「別名ノミの市!」
「さすがに休日なだけあって人が多いな」
「見ろ! 人がノミのようだ!」
「落ち着け!」
「ぶたれた……」
「テンション上げすぎだ。アホなことを大声で叫ぶんじゃない」
「あ。かわいいの発見〜」
「……聞けよ」
「ね〜。これ買って〜」
「自分で買え」
「ひどいっ! 私のお金だけが目当てだったのねっ!?」
「もはやワケがわからんな」
「仕方ないから自分で払おうっと」
「当たり前だ」
「……あ」
「どうした?」
「お財布忘れた」
「…………利子つけるぞ」
「あぅ……」

「これもいいな〜」
「ルービックキューブ?」
「昔持ってたんだけど、いつのまにか失くしちゃったんだよね」
「俺の家にあるぞ」
「あれ?」
「『出来ないからあげる』って言って、置いてったんだよ」
「全然覚えてないよ〜」
「俺も今思い出したところだ」
「じゃあ後で遊びに行くね」
「すでに決定事項か」
「というわけで〜、コレはやめて他のもの買ってもらおっと」
「いや、貸すだけだからな」
「ど〜れにしよっかな〜」
「……聞いてないし」

「これがそのルービックキューブだ」
「……何コレ?」
「正確には元・ルービックキューブだな」
「全部真っ黒なんだけど……」
「言っておくが、お前が色塗ったんだからな」
「ブラックボックスって感じだね〜」
「もはやパズルではなくなってることは確かだ」
「むぅ。私の過去にこんな事件が隠されてたとは」
「お前の頭の中は常に事件だ」
「これじゃあもう投げるくらいしか遊びようがないね」
「やめんか。危ない」
「なんでこんなの取っておいたの?」
「捨てるのを忘れてた」
「じゃあ私がもらってもいい?」
「別にいいけどな。俺はいらんし」
「お返しにさっき買ったこれをあげようっか」
「スカートを履けと。しかも俺の金で買ったものだろうが」
「フリルがついてて可愛いでしょ〜」
「問題点はそこじゃない。もっと前提部分だ」
「え〜?」
「本気で不思議そうな顔するな!」
「似合うと思うのにぃ……」
「そんなのが似合ってたまるか!」


「でも前に履いてたことあったよね」
「文化祭の罰ゲームで履かされてたんだよ! 人の嫌な過去思い出させるな!」




[終]

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