「二人+二人」
著者:白木川浩樹(とぅもろー)



「あ、帰ってきた」
「こんにちは。おじゃましてます」
「遅いよ〜。待ちくたびれちゃった」
「…………」
「頭抱えちゃって、どしたの?」
「……こんにちは中村さん。それと――――おい、貴様ら」
「わ、態度がぜんぜん違うよっ!」
「ひでぇ! 男女差別だ!」
「ちょっとちょっと、私も女の子だよぅ」
「……一応聞いておくが、どうして俺の部屋にいる?」
「あいかぎ〜」
「前に没収したはずだが」
「ふふっ。戦いとは常に二手三手先を読むものなのさっ」
「鍵付け替えるか」
「ひどいっ! せっかく五個も作ったのに無駄になっちゃう!」
「んなもん知るか!」

「――というわけで、高校生の分際で一人暮らししてる男の家を見てやろうと思ったわけ」
「だからって不法侵入かよ。あと、分際って言うな」
「細かいこと気にしないの。減るもんじゃないんだから」
「思いっきり犯罪行為だ!」
「ごめんなさい。笠野君だけならともかく、二人がかりだと止められなくて……」
「いいけどね……もう、慣れたし……」
「わわっ。たそがれちゃった」
「そんなことよりさー、エロ本ってどこに隠してぐぼぁっ!」
「何してるのかな? 笠野君?」
「な、なんでも、ないです……」
「わぁ。見事なボティーブロー」
「俺も女を本気で殴れるほど悪人だったら良かったのに」
「なんで私を見ながら言うのかな?」
「さぁな」

「盛り上がってきたところで、王様ゲームやろー!」
「さっさと帰れ」
「笠野君、シメるよ?」
「母さん……世間の風は冷たすぎるよ。友達は苛めるし、幼馴染の女の子はすぐ殴るんだ」
「ちなみに笠野君のおばさんには承認済みだから」
「うそっ!?」
「いざってときは骨の一本くらい構わないって」
「マイマザー!」
「二階だからあんまり乗り出すと危ないよ〜」
「いっそ蹴り落としてしまえ」
「早く窓閉めてよ。寒いんだから」
「冷たい……。ホントに冷たいよ……」
「あ、泣いてる」
「ほっといていいよ。いつものことだから」
「そうなんだ。じゃ〜いっか」
「ちくしょー! ぐれてやぶらはっ!」
「寒いって言ってるでしょ。いつまで窓開けてるの」
「……イ、イエスサー……」

「さて、そろそろ夕飯の支度をする時間なんだが」
「あ〜、ほんとだ。おしゃべりに夢中で気づかなかったよ」
「それじゃあ私はおいとまするね。ほら、そこのサンドバッグも早く起きて」
「せめて有機物扱いをっ!」
「ばいば〜い。またね〜」
「うん。お邪魔しました」
「ああ、また明日。学校で」
「次はもっと遊ぼうなー」
「警察官と遊びたいなら来てみやがれ」

「……ふぅ。楽しかったね」
「お前はな」
「む、友達いない君のためにわざわざ連れてきたのに」
「もう少し手段を考えろ。っていうか友達いないってなんだコラ」
「わがまま〜」
「まったくもって俺に責任も問題もないんだが」
「もういい。おなかすいた」
「会話の流れを放棄するなよ」

「今日の晩御飯なに?」
「……ぶぶ漬け」




[終]

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