「フリーマーケット」
著者:白木川浩樹(とぅもろー)





「はちま〜い、きゅうま〜い、じゅうま〜い」
「開始は何時からだ?」
「11時だよ。じゅうにま〜い、じゅうさんま〜い……あれ、増えた!?」
「古典か」
「コテン?」
「時そば」
「食べたことない」
「……まあ、いいけどな」
「変な顔して、なんなのさ」
「気にしなくていい。ほら、さっさと数えなおして梱包しとけ」
「は〜い」

「ふぅ。お皿は出来たよ」
「スプーン、フォーク、ナイフ。こっちもこんなもんか」
「ん〜。壮観だねぇ」
「よくもまぁ、使いもしない食器がここまで溜まるもんだ」
「ほんと、不思議だねぇ」
「いや、全然。半分以上お前のせいだし」
「うぇ、そだっけ?」
「そうだ。『すっごいカワイイの見つけた〜』とか言って持ってきてるだろ」
「そのモノマネ、ちょっとキモい」
「……」
「いたっ、何それ痛い」
「菜箸にこんな便利な用途があったとは」
「絶対違うと思う……」

「こっちに置いてあるのはいいの?」
「それは普段使ってるやつだからな」
「だから地味なんだ。これなんて真っ白で丸くて普通のお皿だし」
「なんの問題がある」
「もっと三角だとかこげ茶色とかのほうがゼンエーテキでカワイイと思うよ」
「食器に可愛さはいらん。そしてそれのどこが前衛的だ」
「むぅ。冒険心が足りないなあ」
「いらんいらん」
「そうだ! 駅前にオープンしたてのお店があってね……」
「却下」
「そこに……ってひどい! まだ言い終わってないのに」
「その先の言葉を繰り返した結果がこの有様だろうが」

「これでようやく部屋がすっきりする」
「私のマイコレクションもこれでお別れか……」
「私とマイって意味かぶってるからな」
「細かいつっこみするねぇ」
「ガラクタで部屋が狭かったからな。つっこみが細かくなっても仕方ない」
「う……」
「今度からは変なものばっか持って来るなよ」
「私のもう一つの部屋はあんまり広くないんだよねぇ」
「いや待て、ここはお前の部屋じゃない」
「似たようなもの?」
「疑問形で暴言を吐くな」
「ま、いっか。そろそろ公園に持ってこ」
「流しやがった……」


「や〜。だいぶ減ったね」
「結構売れるもんだな」
「すごいねぇ。楽しいねぇ」
「そわそわしない。子供かお前は」
「だって人がいっぱいだし。お祭りっぽいよね」
「確かに。参加したのは始めてだが、こんなに人が集まるとは思わなかった」
「持ってきたのも少なくなったし、あちこち見にいきたいな」
「ん、まあいいか」
「ようし、それじゃあ。あっちから行ってみよ」
「俺も行くのか?」
「私が迷子になったらどうするのさ」
「自分で言うな」
「それに買ったもの持って帰るの手伝ってもらわなきゃ」
「また俺の部屋に置く気か!?」
「大丈夫。今度からはちゃんと考えて役に立つもの買うよ!」
「無駄使いしてる自覚があるのは良いが、買わないって選択肢はないのか……」


「ねぇねぇ、あっちですっごいカワイイの見つけた〜」
「だから懲りろよ!」




[終]

←BACK:「番外編:二人+二人」NEXT:「コタツ」→