「花」




 春の細い雨に流されて
 冬を越えられずに 散った貴女の命に対して

 雨が止んだ後 一人残った縁側で
 永らえてしまった この命の重さを考える時

 私は
 庭に咲く 梅のようにならなければならないと
 密かに ただ密かに
 ようやくできた春の日溜りに 涙を零す


 桜のように風に舞い 儚く散るよりも

 椿のように雪に映え 瞬きの合間に落つるよりも

 私は
 梅のように 雨に濡れても
 醜く残り続ける花が 愛おしい

 それは多分 一番
 人の生き方に近い花だから なのかもしれない