「夏の終わり・U」




 夕暮れの町を もうひと撫ぜ

 いつも同じ風が吹くから

 夏の終わりは すぐ分かる


 膿んだ傷口のように いつまでも

 心のちょうどいつも 少し触れる部分に

 残り続けるものの名前が わからずに



 その悲しみに 名前をつけたなら

 それはもう 思い出になってしまうけど



 夜になる町を もうひと撫ぜ

 生暖かい風を惜しむように


 砕かれた光の中を 歩き出す


 夏の終わり