「レフトフライ」



 夏の 眩しい陽射しに


 ふんわり 高く上がったレフトフライが


 蝉時雨のような歓声と 悲鳴に溶けて


 見えなくなる



 九回表の ツーアウト


 最後の夏を 乗せたまま


 どこまでも高く


 そのまま 消えてしまえばいいと


 流れ星に願うように


 祈りが交差する 暑い午後




 今年もまた

  あのレフトフライは 打ちあがり


 きっとまた

  誰かが祈るように 見上げるだろう