「My Owner is Excellent!!」
著者:創作集団NoNames



第四章

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 風の匂いが、ちなまぐさい。
 雨に沈むはずの空気が、やたらと膨張しているような感じがする。
「………まさか、ねぇ」
 シャルは一度、その「予感」に大きく首を振った。
 降りしきる雨の雫が、その艶のある髪から、ローブの袖から、滴り落ちる。
 実際、中に着込んでいるものまで既に染みきってしまっていて気持ちが悪い。

 家に置いてきた「お荷物」も心配だ。
 どちらにしても、一度家に戻る必要がある。

 しかし。
「…………」
 目の前に立ちはだかる、赤く光る額の集団は、それを許してくれそうにはない。
 その数、ざっと二十。中には街中で多少、見知った顔もある。
 今は、こちらの様子を伺うようにゆらゆらと漂っているようだ。
「…………」
 彼らの口から放たれる、吐き気のするような罵詈雑言を呟きがさざなみのように押し寄せてくるのを塞ぐようにして、シャルは重たく水を吸ったローブを脱ぎ捨てる。
「あやつられているだろうですから分かりはしないでしょうけど、一応言っておきます」
 ローブの下に着ていた、漆黒の上下。
 腰の左右に下げられた短刀が二本、淡い青の鞘を身につけて揺れている。
「私は邪魔が入るのが一番嫌いなんです」




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